9月、金融庁から全国の金融機関向けの新たな指針である「金融仲介機能のベンチマーク」が公表された。皆さまの旅館・ホテルにも影響の大きい行政機関の方針であるので本コラムで紹介しよう。
本指針が出された背景には、金融機関が主体となって、担保・保証依存の融資姿勢からの転換や取引先企業の経営改善支援・成長力強化・事業再生を推進してほしいという行政の考えがある。金融機関には、取引先企業のニーズに応じた融資や解決策の提供を行うことで、取引先企業の成長や地域経済の活性化に貢献することが期待されている。
この考え方は、2003年に公表された『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』以降、重ねて示されてきたものであるが、取り組み内容や成果は金融機関によって大きな差があるのが実情だ。
これまでの方針と大きく異なるのが、公表すべき項目を金融機関の間で比較可能な指標(ベンチマーク)にしたことである。例えば、「担保・保証に過度に依存しない融資の推進」というテーマについて、金融機関からこれまで開示されてきた情報は、「目利き人材の育成や社内勉強会の実施、無担保融資商品の開発」といった、金融機関の間で比較しにくい曖昧な表現が多かった。
今回の指針では、達成度が測りやすいように「金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び全与信先数、及び融資額に占める割合」や「地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び無担保融資額の割合」「地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合」「地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合」などが挙げられている。
実績となる指標は、各金融機関が自主的に開示することが前提となるが、どの金融機関が無担保・無保証融資に積極的か明確となる。旅館・ホテルを経営される皆さまにとっては、どの金融機関とより積極的にお付き合いをすべきか貴重な参考情報となるだろう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)